うずまき2017 powered by Jun-Systems

耳管開放症, SAS, 統計解析, 人工知能, プログラミングそれに思考

*

tunecoreのDOD (Disk On Demand)代行でのCD流通を考える

   

tunecoreからメールが来て、AmazonのDOD(Disk on Demand)への登録代行を始めるという告知がありました。気になったのでいろいろ考えてみます。

まずAmazonのDOD(Disc On Demand)についてamazonのウェブから

ディスク・オンデマンド(DOD)について

ディスク・オンデマンド(Disc on Demand)は、お客様のご注文を受けてから、コンテンツの権利を保有するメーカーからのライセンスのもと、Amazon.co.jpがBlu-ray、DVD、CDを製造し、出荷するサービスです。主に、廃盤商品や商品化されていないコンテンツを、コンテンツの権利保有者であるメーカーの許可を得て商品化しています。

書いてある通り「廃盤商品や商品化されていないコンテンツ」が中心だからか,そもそもこのサービス自体を知りませんでした。完全にtunecoreのサービスかと思ってびっくりした。

ていうか、よそのブログみたいなページでCD販売ってかいてあるけど、実はAmazonのDODって

「コンテンツは、市販品と同等の音質および画質でBD-R、DVD-R、CD-Rに記録し、市販品と同等のケースに入れてお届けします。」

プレスじゃないんじゃない????
DODって販売されていない商品だからCD-RやDVD-Rにやいて送ってもらうことに意味があるわけで、市販のCDと同じコンテンツがもしCD-Rに入って送られてきたらちょっとそれは同じ値段で売るわけにはいかないという話になるんですよね…

一方以下tunecoreのメールから引用

<DOD受託サービスとは?>
在庫リスク0、初期費用0円であなたのCDをAmazon.co.jpで販売できます!
カスタマーからの注文に応じて、必要な数だけDVDやCDをAmazon.co.jp
が生産する包括的ソリューションです。コンテンツとなるデジタルデータ
(音源データ・パッケージ画像・メタデータ) をご提供頂くだけで、
Amazon.co.jpが商品の販売・生産・出荷までを一貫して行います。

tunecoreからのメールにはDOD受託サービスとあるものの、中にはしっかり”””CD”””ってかいてあるんで、とりあえず普通に市販のプレスされたCDと同等のクオリティの商品が届くことを仮定して話を進めます。

これまでtunecoreに楽曲を登録するだけで各種配信サービスへの楽曲登録を代行してくれるサービスは行われてたわけですが、CDのプレスについてはまた別の会社に頼んで台湾なりでプレスしてもらった上で流通かけるための努力が必要だったわけです。何よりまずもってプレスは初期費用が高いので、量産しないとCDの1枚あたりのコストが爆上がりするんですよ。最近は業界の努力の成果か初期費用がガンガン下がっていましたが,それでも高い。需要が少量なものにはそもそも向いてない生産形態だった。

そんな中、これまでAmazonがDVDなどを対象に行っていたサービスDOD(Disk On Demand)について、tunecoreが登録を代行するサービスDOD受託サービスが始まるらしい。メールによれば初期費用どころか在庫リスクもかからないらしい。ひょー。実際にはAmazonが「商品の販売・生産・出荷までを一貫して行」なうそうなので,tunecoreはそこへの申請と集金の代行なんでしょうね。これまでのダウンロードやストリーミングへの登録代行と原理としては同じですね。 

tunecoreに代行してもらうと普通にAmazonのこのページに並ぶらしいです。
個人的には正直あんまフィジカルには興味ないんですけど、今やってるSacrificeなるクルーでたぶんCD出すので色々と戦略を立てていたところでした。

収益の試算

マーケットプレイス扱いになるのかtunecore専用の契約形態があるのかとか色々と詳細が不明なので試算でしかありませんが、DODでCDをAmazon経由で販売した場合の収益について試算してみます。DODの【収益】(ここが重要)の15%が手数料らしいので、販売価格を税込1080円とすれば返ってくるのは…
1,080円 – 80円(消費税8%) = 1,000円
x 85% (AmazonのCDカテゴリ販売手数料15%) = 850円
– 140円(AmazonCDカテゴリ成約料) = 710円
– 100円(Amazon基本成約料) = 610円
x 85% (tunecoreの販売手数料15%) = 518.5円
= 518円
ぐらいかなー。おそらくはAmazon側がDOD用にプランを立てているはずなので多少の上下はあるとは思うけど。さらにはAmazonの基本成約料は小口出品にしかかからないので、tunecoreが大量のアーティストやレーベルの商品をまとめて出品する今回は必要ないかもしれない。だとすれば収益は1枚あたり603円ぐらいですかねー。単純に「在庫コスト無し」「発送不要」「集金リスクなし」で1000円のCDから一枚あたり粗利益が500円でるとしたら、人件費とか考えれば結構なもんだと思います。

で、結局CDとデジタルとどっちの方が儲かるのか

これが一番気になるところですね。
普通に考えれば物理的なコストのかからないダウンロード販売の方が圧倒的に儲かりそうなもんですね。実際tunecoreのサイト上にもデジタル配信については「配信ストアの手数料を除いた金額をすべてアーティストに還元」という表記がある。

ここでtunecoreの規定を読むと、

本サービスは、弊社よりご提供しております『ディストリビューションサービス』(各配信ストアへの楽曲配信)とは、別サービスになります。また『ディストリビューションサービス』を利用されているアカウント管理者様を対象としたご提供となりますことをご了承ください。『DOD受託サービス』のみの提供は、行っておりません。

別サービスだけど独立した提供は行っていないって全然意味がわからなくて笑うんですけど、まあせっかくtunecore使ってAmazonで流通かけるのにデジタル配信はやらないってのもおかしな話なんで、普通にデジタル配信もやると考えれば、実際にはコストとして上の金額に加えてデジタル配信料がアルバムで年間5,000円ぐらい必要になりますね。CD販売自体の1枚の粗利が500円だとしても、配信での1枚あたりの販売収益もおおよそ同じぐらいなので、単純計算でデジタルとダウンロード合わせて10枚以上売れるならやればいいんじゃないですかね。というか追加で初期費用がかからない以上、全員やればいいんじゃないですか。何よりCDが10枚も売れないのに流通かけるとかただの思い出作りかよって話になります。

さっきの例の通りフィジカルで1,080円で販売した場合の収益は518円ぐらい(予想)です。一方、同じ額でiTunes Music Storeでアルバムをダウンロード販売した場合には、iTunesの1,050円での販売に対する最低販売収益が606円、Amazon mp3ストアでの販売の場合も606円なので、気持ち高いかなという程度です。もしtunecoreを経由した場合のAmazonの小口販売手数料がかからないとすれば、CDで売ろうがダウンロードしてもらおうが収益は600円程度でほぼ変わりません。(つまりダウンロード販売の手数料が思ったより高い)

まー、tunecoreとしてもどちらでも同じぐらいの収益にしたいとは思ってるんじゃないですかね。片方の方が儲かるとなればまたいろいろ面倒ですし。

あと参考までにAppleMusicでのストリーミングの利用料を示すと、これは本当にリスナーによって全然違っていて,

楽曲の販売収益 = 「月額利用料金(税抜) – 決済手数料等」 x 58% x 「利用率」

で決まるのでマジでなんとも言えません。あんまり音楽を聴かない人に何回も聴かせるのが勝ちという我々に一番無理がある狙いどころです。

これまでは初めに「5万円で500枚生産!」とかいってCDのプレスにまとまったコストを払った上でそれを1枚当たりに配分してコストを計算しなきゃいけなかったわけです。5万かけて500枚作って1000円で売るとなると、損益分岐点を考えても最低最初の50枚売り切るまでは利益が出ない。実際にはスタジオ代とかレコーディング/マスタリングにあれこれ全部取り返そうと思ったらはるかに多くの枚数の売り上げが必要になるので、初期費用は少しでも抑えたいというのが実情でしょう。
(今回のプランのように初期費用を抑えると,大抵はその代わりに1枚当たりの利益がガクッと落ちるので、大量に売れるのが明白な場合には大量生産で一枚当たりのコストを落とした上で、初期費用で済ませた方が楽な場合が多いと思う)

参考までにAmazonの破滅的にダサい名前の「Amazon e託販売サービス」を使った場合、年会費9000円に対して税抜き商品価格の60%が返ってきますが、これは生産まで請け負うわけではないので結果的には割高+在庫管理が必要になります。ただし、手売りしたり他のCDショップにも販売を委託している場合にはまた話が変わってきますけどね。

あとはtunecore経由とかにかかわらず,フィジカルの流通にはJANコードの取得がいるんじゃないかな。(JANコード:日本でその商品にしか付いていない商品番号)これは確か金がかかるはず。

完全にネットでのデータのみでの入稿になる上に初期費用が一切かからないところを見ると、おそらく商品サンプルは一切もらえないんだろうし,自分用とか手売り用に数枚だけ手数料のみで買えたりとかすると最高ですね。でもその肝心の生産-販売-発送の全てをAmazonでやってるので、まあたぶん無理でしょうし、たぶん自分で1080円で買って500円を収益として手元に戻してから手売りするしかなさそうですね。結局在庫管理が必要になる上に手売りなのに何枚売っても永久に原価500円はあまりに高いのでやめたほうがいいです。

ブックレットが作れる

なにやら普通のCDと同様にブックレットまで作れるそうです。

DOD (Disc on Demand) 受託サービスでは、最小4ページから最大24ページまでのブックレットが作成できます。写真でもグラフィックでもお好きなデザインを見開きの状態で制作し、ご入稿ください。

この辺のコストの話はまだ載ってないのでなんとも言えませんが,普通に考えれば「ペラ1枚のジャケだけなら初期費用無料」ってところでしょうかね。Amazon次第ですね。

このサービスのインパクト

まずもってそもそも、アルバムを全国流通にかけるにはレーベルの力がいるんですよ。個人やたかがクルーのレベルで全国流通かけて全国のタワレコにおいてもらう努力する暇があるなら働いたほうがいい。
AmazonのDODもこれまではおそらくレーベルとか企業単位での契約が原則になっていたんだと思います。もちろん個人でCDプレスしてAmazonのマーケットプレイスに出品したりってのは今までもできたんだけど、その場合にはこっちで発送しなきゃいけないし、自分で在庫リスクも負わなきゃいけない。追加発注がいらないギリギリのラインを計算した上でこちらででまとめて生産発注して手元に置いとかなければいけないわけです。それが面倒なら今度は日本語ラップならwenodとかCastleあたりに置いてもらうよう頼みこんで全国に発送してもらう感じになる。これもいろいろと面倒そうな感じがある。在庫リスクを負うのは同じ。
弱小レーベル、もっといえば個人で大量販売が見込めないものの少量での販売でも1枚から利益を出したい場合にはぴったりですね。これを個人単位でやれるのは大きい。

そんな感じで,サービスとしてはかなり良さそうな雰囲気がある。
色々言いましたけど、とりあえずまあうちのthe Sacrificeのファーストは実験的にこれ使うと思います。結果が楽しみです。

the Sacrifice

the Sacrifice(サクリファイス)はDr.VIRUS (Rapper, from 茨城) / Stuuuuvin (Rapper, from 岩手) / Lunniebeats (Beatmaker, from 名古屋)の3人がどういうわけか縁もゆかりもない地からそれぞれ集まって結成されたクルー。現在制作中のアルバム『LSD(仮)』はメンバーの名前の頭文字を採っただけでそれ以上の意味はない。


 - Amazon, 音楽 , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

Amazon Cloud Driveで音楽、データ、Mac上の全てをクラウドにバックアップする
no image
【One Asia】アジアのヒップホップ【One Hiphop】
2017年イベント情報
プラグイン系の物欲整理を行いますよ
三浦大知の素晴らしさ
EDMと日本のチャート音楽
no image
Spotifyのジャパン・パッシングに見る日本の音楽業界の話
SpotifyからGoogle Play Musicに乗り換えました。
ストリーミング時代の音楽産業 音楽は商品から資産へ
no image
音楽産業でDRMが違法ダウンロードに与える影響についての論文を読んでみた(前編)【続・DRM論争】