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『DRM廃止が音楽の売上を10%伸ばす』TorrentFreak翻訳記事

      2015/02/22

これは翻訳記事です。
元記事What Piracy? Removing DRM Boosts Music Sales by 10 Percent | TorrentFreakにもアクセスをお願いします。
翻訳のミスにより元記事と主張が相違している場合があります。
細かい文意は必ず元記事にてご確認ください。


DRM was once praised as the ultimate tool to prevent music piracy, but new research shows that the opposite is true. Comparing album sales of four major labels before and after the removal of DRM reveals that digital music revenue increases by 10% when restrictions are removed. The effect goes up to 30% for long tail content, while top-selling albums show no significant jump. The findings suggest that dropping technical restrictions can benefit both artists and the major labels.

かつてDRMは音楽の著作権侵害を防ぐ素晴らしい方法として賞賛されていました。しかしながら、新たな研究により、それとは全く正反対の事実が浮かび上がってきたようです。
4つのメジャーレーベル会社のDRM廃止前後でのデジタル配信の利益を比較すると、廃止後では10%も利益が増加していることがわかりました。この効果は、高い売上のアルバムについては明確な上昇が見られなかった代わりに、ロングテール商品(ヒット商品ではなく、どちらかというとニッチな商品)に関してはその増加幅が30%にも及ぶことがあるとしています。
この発見から、コンテンツの共有制限を廃止することが、アーティストとレーベル会社双方への利益につながることがわかります。

For more than a decade the music industry has been struggling with online piracy.To prevent music from spreading like wildfire all the major labels have experimented extensively by adding DRM to digital music files. While this did little to stop piracy, the restrictions did hurt legitimate consumers.

かれこれ10年以上もの間、音楽産業はオンラインでの著作権侵害に奮闘してきました。まるで山火事のごとくどんどん無断で拡散されてゆく音楽コンテンツの共有をなんとか防ごうと、全てのメジャーレーベルは、デジタル音楽ファイルにDRMをかけるような試行錯誤を幅広く行ったのです。この努力によって著作権侵害はほとんど防げなかった一方で、このような制限は合法的に音楽を楽しむ消費者たちを深く傷つけたのです。

It turns out that consumers find music with DRM less attractive than the pirated alternative, and some people have argued that it could actually hurt sales. A new working paper published by University of Toronto researcher Laurina Zhang confirms this.

消費者はDRMのかかった音楽は著作権侵害された音楽よりも面白くないと感じている、ということがわかってくると同時に、一部の人々は、このような施策は実質的に売上にも影響を与えていると主張を始めました。トロント大学の研究員であるLaurina Zhangさんは、新たな論文でこれを裏付けました。

For her research Zhang took a sample of 5,864 albums from 634 artists and compared the sales figures before and after the labels decided to drop DRM.

“I exploit a natural experiment where the four major record companies – EMI, Sony, Universal, and Warner – remove DRM on their catalogue of music at different times to examine whether relaxing an album’s sharing restrictions impacts the level and distribution of sales,” she explains.

彼女は研究の中で634のアーティストによる5,864のアルバムを取り上げ、DRM廃止前後での売上を比較しました。
「私は、EMI、SONY、ユニバーサル、ワーナーという4社が、異なるタイミングで自社コンテンツからDRMを取り除いていった自然実験を利用しました。これによって、アルバムの共有制限の有無が売上に影響するかどうかを確認しました。」と彼女は説明しています。

This is the first real-world experiment of its kind, and Zhang’s findings show that sales actually increased after the labels decided to remove DRM restrictions. “I find that the removal of DRM increases digital sales by 10%,” Zhang notes.

This effect holds up after controlling for factors such as album release dates, music genre and regular sales variations over time.

この実験は、このような類の中では世界で初めてのものだと言えるでしょう。
彼女の発見は、レーベルがDRM廃止を決めたことが本当に売上を伸ばしたという事実を示しているのです。
彼女によれば、DRM廃止によって、配信の売上は10%伸びているそうだ。
このDRM廃止による売上増効果は、「アルバムのリリース日時」や「音楽ジャンル」、そしてその他通常の売上に関する変数[1]を時系列でコントロールした上で算出されています。

Interestingly, not all albums are affected equally by the decision to remove DRM. Older albums selling less than 25,000 copies see their sales increase by 41% and overall lower-selling albums get a 30% sales boost. The top selling work, on the other hand, doesn’t benefit from less restrictions.

面白いことに、全てのアルバムが均等にDRM廃止の恩恵を受けているというわけではありません。25,000枚未満の売上の古いアルバムについては41%の増加が見られており、全体的に売上の低いアルバムに関しては、30%増加しています。その一方で、高い売上のアルバムに関しては、それほどまでに影響を受けているわけではなかったのです。

“Relaxing sharing restrictions does not impact all albums equally; it increases the sales of lower-selling albums (the “long tail”) significantly by 30% but does not benefit top-selling albums. My results are consistent with theory that shows lowering search costs can facilitate the discovery of niche products.”

彼女の説明によれば、共有制限を緩めることが、全てのアルバムに均等に影響をあたえるわけではありません。つまり、売上の低いロングテールのアルバムに関しては、有意に30%、しかしながら売上の高いアルバムではそうではなかったのです。この結果は、「検索コストをさげること[2]が、ニッチな商品を発見するのを簡単にする」という理論と一致しています。

According to Zhang, the 30% sales increase for lower-selling albums can be explained by the fact that DRM-free music makes it easier for consumers to share files and discover new music. The finding that removing DRM from top-selling albums has no effect on sales makes sense in this regard, since the discovery element is less important for well promoted musicians.

Zhangさんによれば、売上の低いアルバムの30%の売上増は、「DRMフリーの音楽は、消費者にとっては、ファイルの共有と、さらにその先の『新しい音楽の発見』を容易にする」という事実によって説明できるというわけです。この仮定によれば、高い売上のアルバムからDRMを廃止しても大きな意味はないのです。なぜなら、既に十分に宣伝をしているミュージシャンにとって、消費者に自分の音楽を新たに見つけてもらうということはそこまで重要ではないからです。

While DRM is still prevalent in the book industry and elsewhere, most of the major labels are now in agreement that it’s not a good fit for music.

Those who look around will find that there’s hardly any music being sold with classic DRM in place. Even the RIAA admitted that DRM is an endangered species, probably because what the researchers report today is rather accurate.

The late Steve Jobs already knew this a long time ago. “DRMs haven’t worked, and may never work, to halt music piracy,” he said back in 2007.

電子書籍などの産業において未だDRMが盛んである一方、ほとんどのメジャーレーベルでは、既に「DRMは音楽には適していない」という認識に至っています。
周りを見回してみても、未だに古臭いDRMをかけて販売している音楽はなかなか見つからないのではないでしょうか。
今日研究者たちが発表している事実のほうがよほど正確であるので、RIAAでさえもDRMはもはや絶滅危惧種だと認めているのです。

故スティーブ・ジョブスもこのことはとっくに理解していました。
「音楽の著作権侵害を防ぐといっても、これまでDRMは全く役に立ってこなかったし、この先も全く役に立たないかもしれないんだ。」彼は2007年にそう言っていたのです。

訳注:

[1]通常の売上に関する変数:
おそらく、ある1社の値下げセールや、クリスマス前などの季節的な影響、アーティストのライブ催行など、音楽の売上に関連する時間的なイベントのこと。

[2]検索コストをさげること:
おそらく、コンテンツを他人と共有することによって、自分から調べる必要性が薄くなること。

翻訳後記:

この実験を読むと、「音楽配信は段々と利用数が増えてるんだから、DRMを外さなくても自然と売上が伸びただけなんじゃねーの?」というような疑問をもつ方もいらっしゃるかと思います。
しかしながら、この実験最大のミソは、Laurina Zhangさん本人も言っているように、「異なるタイミングでDRMを外していった4社」について売上を比較したという点です。DRMを外したのがある1時点だけだった場合(実験対象のアルバム全部が同時にDRMを外した場合)、DRMの廃止が売上に与えた影響をみるのは少し難しくなります。しかしながら、異なるタイミングであると、ある1社がDRMを外した場合でも、他の外していない3社の売上の伸びと比較することにより、「売上の自然増」(配信ブームで勝手に伸びていった売上の割合)の割合を推定することができます。これにより、自然増の影響を取り除き、「DRM廃止」のみの純粋な伸び幅をある程度は抽出することができます。

DRM廃止による売上増とは別にここで明らかにされていることは、「既に十分に宣伝されているような有名なアーティスト、アルバムに関しては、消費者の共有によるクチコミはそこまで重要ではない」ということです。
日常生活している中で、メディアの露出に触れた時点で、消費者にとっての新しい発見は終わってしまうということですね。

音楽レーベルがやるべきことは、著作権侵害防止のための施策を打つということではなく、むしろ自社の音楽をもっと積極的に人々に宣伝するということなのかもしれませんね。

元記事

What Piracy? Removing DRM Boosts Music Sales by 10 Percent | TorrentFreak

 
 


 - 翻訳記事, 音楽

Comment

  1. […] 歌ってみたみたいな気軽なノリのタイトルにしましたが、中身は結構マジメです。 ぼくが普段読んでるMarketing Scienceという海外の論文雑誌にたまたま音楽産業の話が載っていたので、簡単に要点を紹介したりしながらいろいろ書いていこうかと思います。論文はVernik, Purohit, and Desai (2011) ”Music Downloads and the Flip Side of Digital Rights Management” です。文献の詳細は最後に書きます。 以前『DRM廃止が音楽の売上を10%伸ばす』TorrentFreak翻訳記事というのを書きましたけど、それの続編といった感じでしょうか。前回の記事で「つまるところDRMってクソじゃね?」という話に関しての概略を書きましたが、今回の論文はかなり数理的に分析されているので、もう少し深い部分まで掘り進めた話ができるような気がします。 丸ごと翻訳だとちょっと最近のコンテンツ丸パクリのキュレーション感が否めなくて嫌なので、思いつく限りはいろいろと綴るつもりでいます。   […]

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