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音楽業界とハードウェア人気の再燃

   

今の再燃したハードウェアブームは”アナログ回帰”の文脈で語られることが多いですが,個人的にはそこではないと思っています.はっきりいえば「コンピュータの性能の向上」「結局PCって面倒じゃね?」っていう話から,現場でのいわゆる「脱PC」の流れが始まっているという実感があります.いろいろと書いていきます.

ハードウェア機材が立て続けに発表されている

作曲,シーケンサーの流れでいえば,KORGのElectribeやvolcaシリーズの圧倒的な人気,そしてそれを見たRolandではAIRAによるハードウェアシリーズの復刻,先日はTB-03やTR-09なども立て続けに発表されました.(この辺はあんまり詳しくないので詳述は避けます)

ぼくはヒップホップのビートメイクとかフィンガードラミングとかやってる人間なのでどうしてもドラムパッドがついたハードウェアに目が行くんですが,先日PIONEER DJがついに独立型のサンプラーTORAIZ SP-16(トーライズ)をリリースしたばかりです.一方でAKAIはそれに一歩先駆けてMPC TOUCHを発表しました.

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PIONEER DJ / TORAIZ SP-16

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AKAI / MPC TOUCH

ぼく個人としてはAKAIはMPC RENAISSANCEをブラッシュアップしていくのかと思っていたんですが,RENAISSANCE自体はただのコントローラであって実際に作業しているのはPC上のMPCソフトウェアなんですよね.そういった意味でなかなかハードウェア自体をアップデートした後継機のリリースというのは難しいんでしょうか.まあその点Native InstrumentsのMASCHINEシリーズなんかはうまくやってるなという印象ではあります.
AKAIのコントローラ系でいえば,最近はMPDシリーズの後継機なども出していましたね.

音楽における脱PCの流れ

脱PCの流れというもの自体があることは今さら言うに及ばないとは思っていますが一応言います.上記のようなハードウェア機材の再燃はもちろんですが,たとえば(特にパイオニアが強く推している)CDJ+USBメモリでのDJなどもその流れの中のひとつじゃないでしょうか.

そしてこの脱PCの流れを支える原動力になっているのは,
・コンピュータの高機能化
・PCやITへの疲労
の2点なんじゃないかなと思っています.

コンピュータの高性能化

コンピュータの高性能化はここ10年ぐらい云われ続けているわけですが,だからといって言及しなくていいというものでもありません.今の高性能化というのは,従来の「デスクトップPC向け」「とにかく多機能」「計算能力の向上」というような形ではなく,どちらかというと”モバイルへの最適化”,つまりは「小型化」と「省電力化」だからです.
今PCで作曲するのが当たり前になっているのは,結局はハードウェアから始まった作曲機材の流れが「高性能なPCで全部やれたほうが便利じゃね??大容量で音源もいっぱい入れれて好きなだけ保存もできるしネットでの共有も簡単!」っていう事実に堰き止められただけの話です.当時MPCがシーケンスデータをフロッピーに保存し,完成した楽曲はCDRに書き出ししたりしてたんですから,そら不便に決まっています.

しかしそれも近年の
「HDDからSSDへの流れ」
「SSD自体の大容量化」
「CPUの高性能化と省電力化」
「バッテリの小型化と大容量化」
「RAM(メモリ)の大容量化と低価格化」
「無線ネットワーク(WiFi, Bluetooth LEなど)の利便性の向上」
といったいろんな技術的な進歩(挙げきれない)によって,スタンドアロンのハードでも普通に作曲なんてできるようになっちゃったんですよ.

そういった技術面の要因がある一方で,個人レベルでもPC以外にこういった高性能なデバイスを購入することに抵抗を感じなくなってきているという事実もあります.実際今のスマホを見れば一目瞭然ですが,ぼくが子どもの頃のPCより既にはるかに高いパフォーマンスを出せる上に,「パソコンは持っていないけどiPadは持ってる」というような人までいます.コンピュータであれば,必ずしもPCの形をとっている必要などもはやなくなってきているわけであります.

PCとITへの疲労

DJもスマホでやれる時代です.コントローラをiOSデバイスにつなぐだけで本当に簡単にライブラリ内の楽曲でDJができたりします.少なくともPCにつないで難しいインターフェイスの設定をしたり,ドライバのインストールをしたりする必要はありません.つなぐだけで動く.この手軽さが今ライト層に圧倒的な人気を誇っているみたいです.

PCへの疲労というのはクラブでのDJ事情とか作曲ソフトを使ってるユーザの感想とかを少し漁るだけでだいたい理解できるんですよ.PCで使える作曲ソフトウェア自体がどんどん進化していく中で,いろんなパフォーマンスを行えるよう機能はここまでどんどん複雑化してきました.しかし,その結果として素人にはなかなか使いこなせないような難解なものができあがって今に至ります.同時にDJ事情でいえば,未だに現場でPCDJで音が出ないだとか,音が止まるだとか,PCがクラッシュするだとか,そういった問題が本当に絶えないんですよね.そうなってくると,「USBメモリを挿すだけで動くってめっちゃ便利じゃね???」みたいな考えから一気に流れが変わったりするわけです.

「挿すだけで動くのが便利だっていうなら,別にスマホでもよくない?」という話もあります.しかしながらですね,パソコンでも同じなんですけど,最大の問題になるのはCompatibilityです.特にiOSはmacよりも仕様変更が顕著な印象があります.
「OSの音声周りの仕様変更でこれまでのドライバでは音が出ません」
「コネクタの端子が変わるので今までの端子では接続できません」
「このアプリは更新しないと使えません」
デバイスメーカーはOSのアップデートへの対応やデバイス自体の非常に頻繁な仕様変更に振り回され続けているというのが現状です.こうなってくると,もはや自社で組み込みのOSを開発してスタンドアロンのデバイスにしてしまった方が長い目でみると明らかに色々とラクなんですよ.少なくとも,自社に関係ない仕様のために無駄な労力を払うことは圧倒的に減りますし,OSのアップデート等を通じた将来的な機能の拡張にも比較的対応しやすい.今はWiFiもチップ一つで簡単に載せられるので,ネットワークを通じたOSのアップデートもかなり簡単に実装できるようになったはずです.

まとめ

こういった「結局パソコンは面倒」っていう理解の広まり,そしてそれと並行した,モバイルやスタンドアロンのデバイスで同じレベル(もしくはそれ以上)の機能を実装できるほどにテクノロジが進歩したこと,この2点から脱PCの流れが起きているんじゃないかと考えています.
ぼく個人としても,最近ではクラブでのショーケースにパソコンを持っていくのが嫌で仕方ないのです.「クラブでMac使ってるのがかっこいい!」なんていう考えはとうの昔に消え失せていて,今はたいていの人がMac使ってるのであちこちでリンゴの発光が観測できます.スタンドアロンで今より面白いショーケースができるなら喜んでハードウェア機材に移行したいと思っています.

Mac OS Xの最後のOSであるEl Capitanがリリースされてから,本当に現場でもPCの調子の悪い人が増えたなと感じます.macOS SierraはAdobeに切り捨てられたのでもはや期待はしていません.機材メーカーも「音楽企業ってよりただのIT企業じゃねーか」と思うことも多いです.これからのハードウェアに期待したいですね.まあハードになるとその分価格はクソほどに上がると思いますけど.

結局何が言いたいのかというと,PIONEERはさっさと自社ミキサーに非常に大層なCPUとメモリとレコボでも積んで,USBメモリとミキサーだけでDVSができるようにしろということです.


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