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MOOCが大学を潰す未来

   

全ての人が教育を受けられることを目的に、MOOC(Massive Open Online Course)が盛り上がっています。大学に行くお金がない人はもちろん、仕事の合間に勉強をしたい人や、自分の専門外の分野まで幅広く学びたいという人まで、様々なニーズで活用されています。
 
とはいうものの、現状ぼくが観測できている限りでは、MOOCの利用者は圧倒的に大学関係者が多いように感じます。それには主に「学びに対する抵抗感が薄い (むしろ積極的である)」「英語など、言語的な障壁が少ない (ことが多い)」この2つに尽きるのではないでしょうか。
「日本が単一言語国家だから」「英語教育が良くないから」など理由は諸説あるにしても、基本的に日本人は英語が苦手だと言われます。もちろん個人差はあるでしょうが。そのような中で、海外から提供されるMOOCには日本語音声のものはほとんどなく、ときどき日本語字幕が提供されていることがあるという具合です。
 
ぼくは現在文系院生という非常に低カーストな身分で生活していますが、自分の専門分野の深化と並行して、周辺分野への造詣を深めることをひとつの目標にしています。たとえば自分の専門としてのデータ分析には(誤解を恐れずかなり大雑把に分類すると)心理学などの理論をベースとして数理統計を用いて行うデータ分析と、機械学習を用いたデータ分析が存在します。しかしながら、文系のぼくには、普通に大学で講義を受けているだけでは機械学習を学ぶタイミングは全く一切これっぽっちも存在しません。
これまでなら、工学部の講義に潜り込むなどの非常にリスクの伴う行動を取る必要があったでしょう。そうでなくても、講義を開催している教授に連絡をとり聴講願を出して云々…。それが、ネットでいつでもどこでも講義を受けられ、さらには課題を見てもらい、あわよくば(あまり役に立たないものの)修了認定までもらえるわけです。こんなに素晴らしいサービスはありません。
 

MOOCが大学を潰す??

さて、本題に入ります。
先日こんな記事を見つけました。
MOOC革命で日本の大学は半数が消滅する!高等教育のオンライン化がもたらす「衝撃の未来」(上)| 東洋経済
 
まあこんな話もされていますが、正直なところ日本でMOOCが浸透して大学の半数がなくなるような未来は来ないと思います。結構強い自信があります。
そう言えるのは、今(大半の日本人から)日本の大学に求められているのが、残念ながら「高い講義の質」や「快適な学びの環境」などではないという点にあります。「大卒の資格」「大学のネームバリュー」「高い就職率」「就活のテクニックを教われる」など現在日本の大学に求められているものに関する議論は、よく「大学の専門学校化」という文脈で語られます。
そして、そもそも我々が大学に対してそのような要素を求めるのは、企業もまたそういった人材の育成を「大学に対して求めている」という背景があります。アカデミアの人々は「大学は専門学校ではない」と反論しますが、求められる通りに大学が変わっていけば専門学校と大差ないものができあがるんじゃないでしょうかね。
ぼくはいつも「彼らは別にアカデミックな世界に進むわけじゃないんだから、最低限のリテラシーだけ身につけて後は社会生活に必要なスキルを身につける方向で頑張ればいいんじゃないかな」と思っています。ぶっちゃけ大学に残ってる人間なんてロクなのいませんからね。たとえば経済学部のぼくは「みんな最低限の経済学を学ぶことは絶対に社会に出て役に立つ」と思っていますが、要はそのレベルだけ身につけてもらえれば大学で学ぶべきは、まあ、悪いことをしないとかそんなことでいいんじゃないですかね。
 
記事の中では、MOOCで成績の良かった学生がそのまま企業に引っ張られるような未来について論ぜられています。そういう未来がくる可能性自体は確かにあるのですが、それがメジャーな手段になっていくとは全く思えないんですよね。つまり、企業がある一部の専門職の新規採用にあたってそのルートにMOOCを使用するようなことはあっても、MOOCから営業を採ろうとするとは思えないということです。日本企業が学生に求めているのが成績のいい学生ではないのにどうしてMOOCが採用手段として成立するといえるんでしょうか。
 
日本企業は社員を「オールラウンダー」になるべく育てていくのが伝統的なやり方だと思っています。その場合、MOOCの講義で自分が得意な一分野に極めて突出した学生を獲るのは、理系的な職ではありかもしれませんが、日本企業全体で見ると、全く合理的なスタイルではないというのがぼくの考えです。そうなると、むしろ新卒一括採用で学生を戦わせ、その中で活きのいいのをピックアップしていくほうが明らかに効率的です。
 

MOOCが大学教育音に取って代わるためには

とりあえずいろいろとJMOOC、gaccoの講義を受けていますが、そもそもの話としてMOOC自体のレベルがまだ大学教育というほどの専門性を獲得できていない気がします。統計学あたりは自分の専門にも近いので勉強のために受けていますが、カリキュラムのレベルとしては学部1年の夏までに終わるようなレベルという印象です。あとは、全体的にかなり実務の人がレベルアップのために活用できる方向に作られている感じがして、正直MOOCこそ専門学校的だなあと感じています。
 
MOOCは単科ごとの受講が基本となるため、大学教育に見られるような「体系的な学習」は提供できないと思います。これから科目数が増えてきたときに、目指す人物像や業務内容に合わせて学習する科目を体系的に推薦した推奨カリキュラムみたいなのができたら最高ですね。「このカリキュラムを履修することで、最終的にこういうスキルが得られます、それはこういった職業に役立ちます」みたいな。もちろんMOOCである以上それを履修するかどうかは本人次第ですが。
 
最初の半年で経営工学基礎と統計基礎、次の半年で経営のためのデータ分析、とか。そうやって推奨カリキュラムができる最大の利点は何かといえば、高次の科目でいちいち基礎から解説する必要がなくなることです。データ分析向けの本などを読むとどれもまず統計の基礎的な解説から入りますが、それ自体は別にデータ分析の話ではないわけで、そこを理解している前提さえあれば余ったページでより高度な議論を展開できることと思います。科目を継続して提供することで、持つスキルのブラッシュアップがはかれますし、大学教育感はあります。
 
実際、アメリカでMOOCとして提供されているCourseraMIT OpenCourseWare | Free Online Course Materialsでは、大学の講義がそのまま撮影されていたりするものもあります。これなら大学側の負担も少ない上に、「大学の講義がそのまま提供される」というレベルの高さもあります。まあ実際受けると結構難しいものも多いですけどね。
 
MOOCの発展とともに今後の展開が楽しみですね。
その辺の面白い流れに期待したいところです。
 
 


 - MOOC, 学問 ,

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