うずまき2017 powered by Jun-Systems

耳管開放症, SAS, 統計解析, 人工知能, プログラミングそれに思考

*

肉体労働よりも頭脳労働の方が簡単な世界

   

肉体労働よりも頭脳労働の方が簡単な世界って来ると思います?
思いませんかね。
これを考え始めたきっかけは、「現場で動いてくれる人がいるから頭で考えたものを形にできるのに、頭で考える方が労働報酬は高いんだよなあ、これって逆転しないかなあ」っていう話です。

汎用人工知能が開発されない限り人工知能は基本的に特定の目的に最適化されたいわゆる特化型AIとなるわけですけど、これを実務に投入するためには「同じタスクを人間と同一の精度・速さで行うにあたって人間よりもコストが低くなる」ことが最低条件となるわけです。今日twitterを見ていて機械学習モデルが実務投入に耐えうる予測精度はいくつなのかって話になっており、「郵便番号の振り分け業務に機械学習モデルを投入することを考えた場合、たとえ数字の認識率が99.9%あったとしても1枚につき7桁の番号を認識するので云々、パートのおばちゃんの認識率の速さと高さといったらそれはそれはすごいもので、この程度の精度を担保しながら、なおかつパートよりも安いコストで実現できなければならない」という話を見つけて、「なるほどそれは確かに」と思ったわけであります。

ディープラーニングを実務に投入するために必要な精度

「99%と99.9%と99.9999%なんてそんな変わらんでしょw」と思うかもしれないので、参考までにそれぞれの予測精度で郵便番号7桁の判別を行った場合に、「1つも誤認識が起きない確率」をシミュレーションしてみました。といっても単純な同時確率ですが。

実際には認識しづらい人の文字は全般的に認識しづらいはずなので「3個連続で間違えたと思ったらその先1000個もミスが起きなかった」みたいなことはあるでしょうが、小数点以下の細かい値がこれだけの差を及ぼすことがわかります。参考までに郵便事業における普通郵便物の2015年度引受郵便物等物数は174億2,634万通だそうで、単純に365日で割ると1日平均4774万通を捌いていることがわかります。(2015 年度引受郵便物等物数(PDF) – 日本郵便株式会社 PRESS RELEASE)

5万通と考えると99.9999%の精度でやっと7割なんですよね。でも学習モデルを99.9999%まで仕上げるのは至難の技です。なぜなら見た目が同じなのに書く人によって違う文字になったりするからです。我々もなんか潰れて読めない漢字があっても周りの文字や熟語の組み合わせから「たぶん〜って書いてあるんだろうな」と推測して文章を読むことはあるはずです。つまりそもそも我々自身が、単純に文字の形だけを見て判別しているわけではないんですよ。

というわけで実務での精度を担保しようと思ったら同時に補助情報として宛先の文字も認識させて、都道府県市町村のデータと瞬時に照らし合わせることで文字の判別確率をケースごとに修正するとかやればまあ大丈夫なんじゃないですか。さすがに郵便番号も宛先も全く認識できないなんてことはよっぽどないと思うので。「この番号は5か6のどちらにも見える」という状況で「でも宛先が**県**市だから6である確率が高い」みたいな感じで宛先情報を与えた上での条件付き確率を見るんでしょうね。まあ今のシステムでそんなややこしいことやろうと思ったら結果的に開発費がかさんで実用化できなさそうだけどね。

本題に戻る

で、本題は「頭脳労働の方が簡単になる未来は来るか」っていう話です。今の話からすると、難しいタスクほど(経営とかのレベルになるとまた別だけど)コンピュータでの代替可能性が高まり、「そんなもん自動化したところで採算取れないよ」っていうような一番つまらないタスクが残る可能性があるわけです。(まあ賃金コスト以外にも人的管理とか教育とかそういうコストまで含めると機械化した方が楽な可能性もあるけどね)

そういう意味で、「とりあえず日雇いで警備員をやる」みたいなノリでやる労働が「めちゃくちゃ簡単かつ低賃金かつつまらない頭脳労働」(郵便物の仕分けとか)になる可能性って、ないわけじゃないと思うんですよね。今のところ自分で動いていろいろやってくれるような人工知能ってあんまりないので、一大ビジネスになるとか、自社工場の大幅なコスト削減になるとか、そういうのがない限りは実際に外に出て動ける人材っていうのはやっぱり貴重なんですよ。
先日もうちのアパートの下水道の高圧洗浄を業者のお兄さんにやってもらいましたけど、こんなことを近い将来に人工知能がやってくれるとは到底思えないんですよね。「ロボットが自動運転車に乗ってやってきて、案内された台所の下の配管とか見ながら原因を推定してしかるべき手段で解決をする、それを汎用的にどこの家庭にも対応できるよう学習させる」なんて途方もないコストがかかる。頭脳労働を適当な精度で代替する特化型AIの方が実用性が高いんですよ。

そういう意味で、将来的に「凡庸な頭脳労働」の価値がどんどん下がっていったら面白いなというそういう話でした。

あと念のために言っておきますが、私は「現場で体を動かして働いてくださっている皆さんが社会を動かしている」というのは重々承知の上です。特に私の場合は体がロクに動かない身なので、体を動かして働いてくださるみなさんがいなければ生活はやっていけません。確かにデスクに座って偉そうになんかしゃべってる人もすごいけど、そのインフラを整備しているのが現場の皆さんでありそのありがたみを忘れてはいけないということはいつも頭に入っています。


 - 人工知能 , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

人工知能はこの先必ずミスをする
no image
人工知能との協働としての遠隔医療
自動運転で自動車メーカーは”ただ入れ物を作るだけの会社”になるのか
人工知能は本当に言葉を理解していないのか