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ストリーミング時代の音楽産業 音楽は商品から資産へ

   

近年の海外での音楽産業のストリーミング化の流れはすさまじいものがあります。「日本は乗り遅れてる!」なんて話もありますが,個人的にはこの潮流は違法ダウンロードの蔓延で「タダで盗られるぐらいなら広告付けて無料で聴かせたほうがまだカネになる」って考えが根底にあるんじゃないかと思っています。
 
んでまあ,当然出てくるのが「ストリーミングはカネにならない」という話ですね。とりあえず音楽産業系ブログの権威Jay Kogamiさんの記事を引っ張ってくるならデヴィッド・バーンが音楽ストリーミングの「 Spotify 」を批判、ネットで話題にあたりでしょうか。まあDavid Byrneの主張をあえて批判するとすれば,「そもそもこれまでだってCDの売上だけで食ってきたわけじゃないでしょ」という話にはなります。
 
外で音楽を聞くライフスタイルの変遷を簡単にまとめると,
 
1 ポータブルメディアプレイヤーの時代:
「持っている音楽のうち聞きたいものを持ち出す」
いわゆるCDやMDの時代ですね。聞きたい曲やアルバムをあらかじめ選んで物理的にメディアとして持ち運ぶことで,それを聴いて楽しむ時代でした。
 
2 iPodの登場
「持っている音楽すべてを持ちだしてその場で聞きたい曲を選ぶ」
iTunes to goなんて謳い文句も今となっては懐かしいですが,ハードディスク搭載のiPodの容量の大きさには驚かされました。
スティーブ・ジョブズが外での音楽体験を変えたといわれたのは,ずばりこの点で,「家で所有している音楽ライブラリをまるごと持ち出す」ことをコンセプトとした製品開発でした。
 
3 ストリーミング
「聞きたい曲に聞きたい場所から自由にアクセスする」
クラウド型のストリーミングには「自分のライブラリへのアクセス」と「用意された莫大なライブラリへの自由なアクセス」があります。(後述)
 
このような音楽文化への接し方の変化(Jay Kogamiさんのブログ内の言葉を借りるなら「音楽を保有することから音楽にアクセスしたいという消費者ニーズの変化」,ぼくは「所有からアクセスへ」と表現することとします)はクラウドの時代にも非常にマッチしているように感じます。ネットの速度さえあれば,消費者は高性能な端末を持たなくとも,最近の大したスペックも容量もない$100スマホでも無限ともいえる音楽ライブラリに自由にアクセスできるわけです。(先述の「用意された莫大なライブラリへの自由なアクセス」)
または,日本ではサービスが行われていませんが,Amazon Cloud Playerのように自分の購入した楽曲をすべてサーバ上に置いておき,聞きたいときにオンデマンドでストリーミングするといったサービスもありますね。(「自分のライブラリへのアクセス」)
ストリーミングの興隆は一見するとスマホ等端末の大容量化・高性能化の流れとは対極的とも言えますが,逆にスマホも高価格化が進み,世界的には簡素な格安スマホの流れが出てきていることも考えると,あながち間違いではないようにも思えます。
(ちなみに日本でiPhone 5Cのような廉価スマホが伸び悩むのは,簡単にいえばスマホ本体は割賦購入が一般的というこの独特の商慣習によって,高価格な端末でも消費者がそこまで金銭的な負担を感じないからではないでしょうか)
 
では,このようなストリーミングのビジネスモデルが一般化した場合に,「音楽はどうなるのか」というのが今回のテーマです。そしてぼくの最終的な結論は「音楽は商品から資産へと転換する」です。割と大胆な予測ですが。
 
しかしながら,考えてみると(ぼくとしては)そうおかしいことではなく,現在主流の音楽ストリーミングサービスにおいて収益を出す方法はただひとつ,
 
再生されること
 
です。
 
すなわち,
・より多くの人数に
・よく多くの回数を
・より長期にわたって
再生される楽曲が収益的には最も「強い」のではないかと考えています。
 
それ自体は従来と同じ,多くの人により長い間愛される楽曲(ぼくらの呼び方でいう「クラシック」)を生み出すということが,最終的な金銭へとつながります。では,これを収益構造として考えた場合,従来的なCDやレコード,DL販売といった「所有」によるビジネスでは「公開直後に大きく売上があがり,そこからグッと減る」という構造から,「たとえ10年後でも(このサービスがちゃんと機能していれば),ユーザが1回再生するごとに微々たる金銭が懐に入る」という構造への転換が発生するわけです。
これはどちらかというと,商品の販売というよりは,資産の保有による利子獲得の収益構造に近いように感じます。(身近な例でいえば,アパートを建てて毎月家賃を受け取るような,そんなイメージでしょうか)
 
また,Spotifyのプレミアムユーザ向けにdjayがSpotifyのライブラリを直接参照してのDJサービスをやっていますが,これの最大の利点は,「DJに曲を使ってもらえるとアーティストにお金が入る」ということですね。(入りますよね?) カラオケの使用料は結構おいしいとかという話を昔聞いたことがありますが,これまではDJに曲を使ってもらうことについて,大したインセンティブは発生していなかったわけです。また,「最近DJがよくかけているチャート」といったものがリアルタイムで更新できたりもして面白そうな感じもします。
 
これら所有とアクセスは,どちらにも平等に良さがあるのは明白です。良曲に対して,単発で大きな収益をあげるか,薄く長く受け取るか,という違いだけです。
「でも現状Spotifyとかの広告モデルでアーティスト全然儲かってないらしいじゃねーか!?」という反論ももちろんあるとは思います。しかしながら,それはどちらかというとSpotifyのマネジメントがあまり良くないんじゃないかという気がしています。というのも,(乱暴な比較とも言えますが,)同じフリーの広告による収益モデルでも,テレビ業界ではタレントがとんでもない額の収入を稼ぎだしていたりします。ぼくはNHK以外に直接お金を払ったことはないはずです。いつも思うんですが,この違いはなんなんでしょうか。
端的にいえば,Spotifyのプレミアムユーザのサブスクリプションの価格が安すぎるということではないでしょうかね。簡単なことで,プレミアムユーザは自分のお金でSpotifyやアーティストが受け取る広告収入分のお金を担保しなければいけないわけです。そうしなければプレミアムユーザになると逆に収益が悪化するという謎の現象が発生することになります。少なくとも,現状プレミアムユーザになった消費者が毎月音楽に消費するお金の量は激減しているんじゃないでしょうか。あれもこれもと買っていた音楽が,ちょっと高価なアルバム1枚分かそこらの値段でどれだけでも聴き放題になるわけですからね。
あとは既存のレンタルCDビジネスがストリーミングに完全に取って代わられた場合には,アーティスト側としては多少お得になるような気はしますね。
 
ということで,フリーの広告収入によるビジネスモデルでも,まあやり方によってはうまくやっていけるんじゃないのかなあというのがぼくの考えです。「音楽は商品から資産へ」なんて少し大それたサブタイトルをつけてしまって,ぼくは少し前からこうなるんじゃないかなーなんてなんとなく言ってるんですが,少なくとも日本ではまだこういう動きはないですね。あとはAppleの音楽ストリーミングサービスがもし始まった場合にまた産業構造に動きが出るのかが見どころですかね。
既存のところでは,YouTubeの「広告+連続再生」というスタイルは明らかにHuluやSpotifyの流れを汲んでいるような気がしますね。あれだって結局のところPVが再生されればレコード会社にお金は行きますからね。ただし,違法アップロードのユーザでも簡単に収益を得られるという構造的欠陥も存在しますが。
 
最後に,ちょっと出典が見つからないんですが以前読んだ話としては,アメリカでも「音楽は買うものだ」っていうアーティストたちの反ストリーミングの流れも一部では起きているようですね。自信ないですがJay-Zあたりが言ってたとか。
 
はぁ…俺やっぱこういう研究のほうが向いてんのかなあ…なんて。
 
 


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