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耳管開放症, SAS, 統計解析, 人工知能, プログラミングそれに思考

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音楽を作ってどうなりたいのかっていう話

   

最近音楽系の記事がやたら人気なのでまた新しいことを書きます。
とりあえず過去の記事
もっとリスナーのこと考えて音楽やってよという話
音楽と様式美とオリジナリティ
商業ストリーミングと対比したSoundCloudのあるべき姿
音楽活動と検索のしやすさの話

音楽は売れないけど音楽機材は売れる。アーティストは儲からないけどライターは儲かる。市場が拡大するっていうのはそんなもんです。人が増えるとインフラの方が儲かるんですよ。

やりたい奴が増えて市場に物が増えれば供給増で値段は下がる。そこで市場規模が変わらなければプレイヤー1人当たりの取り分も減る。一方で作り手が増えるから音楽機材は売れるし配信市場もtunecoreみたいな配信側の基幹サービスが儲かる。そして市場に爆発的に増えていく作品のなかからグッドミュージックを見つけてキュレーションしていく人間に需要が出るのもまた当たり前。当然プレイヤー側は大量にうごめく烏合の衆のなかから頭角も出にくくなるし、キュレーター/インフルエンサー的な人間とかに拾ってもらえるぐらいめちゃくちゃやばくて勝手に有名になるか、そうじゃなきゃやっぱり戦略が必要になってくる。

なぜお前は作品を作るのか

結局突き詰めるとそこに行き着く。自分がなんで音楽を作っていて、何を狙っていて、結局どうなりたいのか。それによって取るべき戦略は変わってくる。

そもそも制作のきっかけとしてよく言われる「世の中に自分の聴きたい音楽がないから自分で作る」なんていうのは人間を買いかぶりすぎで、はっきり言って実際そんなやつはあんまいない。大半の(特に若い)やつが音楽始めるきっかけなんて大体はモテたいか、もしくは憧れの人間への自己同一化であり、「俺もああいう人になりたい/ああいうことをやりたい」というある種の自己実現の一環でしかない。人間を美しく描きたいのはわかるけど、所詮そんなもんなんだよ。別にそれが悪いなんて言わないし、俺は結果として市場にいい作品が生まれるならその過程なんてどうでもいいしね。

それより真に問題になるのは、何をどうしたって作品が同質化していくってことです。簡単にいうと、どいつもこいつも結局同じような音楽しか生まれてこなくなる。そういう中でどう勝負していくんですか?経済理論に従って需要と供給に従って値段を下げてでも買ってもらいますか?それじゃあダメなんですよ。

本当に怖いのはプロよりセカンドクリエーター

セカンドクリエーターは「プロじゃないけど趣味で制作してるやつ」ぐらいに思っとけばいいけど、本当に怖いのはプロよりこの層だと俺は思う。なぜかというと、今の時代には「別にプロになるつもりなんかなくて純粋に趣味でやりたいだけっていうスタンスなくせにやたらレベル上げ頑張るやつ」みたいなのがいるからです。そういう奴らは「金なんかいらないから俺のヤバい作品を聞いてくれ」つって音楽をばら撒いたりする。彼らはタダでもいいからそれで名声(=プロップス)が得られれば満足するし、だからこそめちゃくちゃ厄介なんですよ。タダで当たり前にいい作品が落ちてくる。軽いリスナーならそれで満足してプロの作品なんか買わなくなっちゃうかもしれませんよ。これまでならそこからストリーミングの話に繋げていくんだけど、その話はもういいです。

ちゃんと差別化しろ

だからこそ、我々は自分の作品を差別化しなければならない。漠然と音楽作って漠然とやるな。ちゃんと狙え。他とは違うものを作らなければならない。それが圧倒的なクオリティの高さなのか、はたまた作品としてのベクトルの違い(全く新しい音楽を作る)なのか、それは自分の実力ややりたいこととのすり合わせになるけどね。つまりはオリジナルになるってことです。勘違いしてほしくないのは、オリジナルっていうのは日本だと「独自性」みたいに言われるけど、オリジナルの語源はorigin(オリジン)であって、これは独自性というより日本語なら「元祖」の意味合いに近い。自分の作品に下のやつらが続いていくような存在になるってことです。音楽に限らず芸術もテクノロジーも歴史も全て、これまでに積み上げられてきたものに自分のほんの一欠片のアイデアをエッセンスとして振りかけることでオリジナリティになり下の新しい世代がそれに続くことで長い歴史ができているわけです。いくらRADWIMPSがBUMP OF CHICKENっぽいといっても今のバンプに同じ依頼が来ても『前前前世』みたいな曲は書けなかっただろうし、そこがBUMP的な良さを(絶対意識してると思うし)引き継ぎながらも自分たちのエッセンスを加えたRADの良さとして人々に認められていっているってことなんですよ。ラッドが好きでバンド始めたやつも何人も見てきたし、そうやって若い奴が続いてくるようなものが必要なんですよ。

そういうことを何も考えず漠然と自分の好きなアーティストみたいな音楽を作ってるとね、たとえば(Nujabesはキレイめを狙いすぎてて俺は好きじゃないけど、)Nujabesが好きだからってNujabesと同じ音楽を作っても仕方ないんですよ。そしてこれは作ってる自分ではなかなか気づけなかったりする。何より「Nujabesが好き」つって音楽を作ると、実はいろんな音楽を作ってるNujabesを意識せずに全部Nujabesの音楽のうち自分の好きな特定の曲みたいになるんだよ。結果Nujabes専門家みたいになる。それでいいならいいけど、世の中の人は飽きちゃうよ。(Nujabesって本当に例として使いやすいよね)

唾奇はSweet Williamのビートが最高なのもあるしPitch Odd Mansionの大所帯感がいい感じなのもあるけど、何より唾奇の「クズさ」みたいなのがちょっとお洒落に垣間見れるところが最高に良い。

ISH-ONEは基本的に調子こいてて嫌いな奴は嫌いだけど、結局のところ実力で言えば他のオートチューンラッパーより圧倒的に歌は上手いし、あの人の歌はオートチューンなしでも余裕で聴ける。

Simonは自分の韓国系の立ち位置を活かしてK-POPアイドルグループ2PMのJUN.Kとアルバムで客演やりあってシーンとははるかに違う場所のリスナー達にも一気に名前を売った。

KREVAは三浦大知とかMIYAVIとかAKLOとか葉加瀬太郎(!)とか各界の第一線で活躍してるアーティストをフックアップして相乗効果を狙ってる。

振り返るとやっぱみんないろんなやり方で差別化してるんだなあと思う。それぞれの戦略が正しいかどうかは各自で判断してもらうとして。

ストリーミングはアンダーグラウンドを炙り出す

話逸れるけど、俺は普段ストリーミングの話ばっかするけど、実はこれも意識しなきゃいけない。ストリーミングはアングラを破壊しそのグロテスクな中身をまざまざと白日の下に晒す。つまり、SpotifyやApple Musicは、配信し、契約し、検索すればどんな音楽でも出てきて、追加でお金を払わなくても好きなだけ聴ける。もちろんそこにdigはまだ存在するけど、たとえば「めちゃくそかっこいいけど隔月の平日深夜に小箱でやってるクソアングライベントでアーティスト本人に直接声をかけないと売ってもらえないアルバム」とかみたいなアングラ性はどう頑張っても存在しない(イメージは名古屋だとブッダでやってる日乃丸とかKalakutaのイベントとか)。金出せば全部が手に入るようになる。そういう意味では極めて資本主義的だし、俺は好きです。
ただ、俺が過剰なアングラ性はあんまり好きじゃないだけで(なぜなら俺は現場に行かないから)、むしろ徹底的にそこに拘るのもそれはそれでアリなんだと思う。名古屋のBASEさんのMADNASPAINはそもそも配信されなかったし、Issugiの7inc Treeが絶対にアナログの限定生産しかしないのとか、DLIP Recordsが絶対にCDで売り続けてんのとかと同じような話かな。配信しないっていうのも逆に戦略だなあ。まあ、だからといってDLIPと同じやり方したところでパクリだしダサいんだけどね。さっきも言った通りで、オリジナルになるってそこが難しいんですよね。

最後にマジでなんも関係ない話

三浦大知の新曲『U』って絶対Lex Lugarの音ネタ使ってない?Lexのあの有名なtransitionをゲートで細切れにして逆再生してから最初の数音だけ鳴らしてると思うんだけど。それもかなり頻繁に。
日本のメジャーの曲って権利関係でああいうサンプルあんま使わないし珍しいよね。

うちのくそったれアングラミュージックもよろしくお願いします。

Tipsy Clouds – THE SACRIFICE LSD

あー将来的には絶対に音楽産業の分析もアカデミックにやりてえなあ。


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